香粧品お問い合わせ事例集① / 海外コスメの安全性試験って?

 最近、TikTokやInstagramなどのSNSに上がっているコスメ紹介・メイク動画などでは、アジアコスメが多く紹介されています。可愛い上にプチプラなアジアコスメは魅力的ですよね。
 SNSは特に10代、20代といった、いわゆるZ世代に与える影響が大きいとされ、影響を受けた消費者の増加とともに、アジアコスメはオンラインショップだけでなく、オフラインでも販売されるようになりました。実際に近くのドラッグストアに行ってみると、K-popなどの影響で人気の韓国コスメを筆頭に、台湾コスメ、中国コスメなど、以前よりも多彩でカラフルな化粧品を見ることができるかと思います。

 このようなトレンドがある中、アジアコスメを輸入しようとする企業も増えており、私たちニッセンケン香粧品グループにも多くのお問い合わせが寄せられています。とりわけ多いのが「韓国、台湾、中国から化粧品を輸入したいのですが、安全性を確認するためにはどのような試験が必要ですか?」というご質問です。

 当コラムでは、この多くの皆さまの疑問に対し、品質管理のプロ視点でズバッ!とお答えします。ご参考になれば幸いです。

試験項目について

 輸入化粧品につきまして、「ホルムアルデヒド、重金属(ヒ素、鉛)」については最低限試験を実施することと、行政から口頭で通達されています。しかしながら、それだけでは不十分な場合もあります。例えば、アルコールを使用している化粧品だとメタノール、水が入っている化粧品だと生菌数(細菌、真菌)、中国・韓国・東南アジアで製造された化粧品であれば重金属(カドミウム、水銀)も測定しておくと安全です。

 何故この試験項目をお勧めしているのかというと、同じアジア(東北・東南アジア)でも、国によって化粧品の安全性基準が異なるからです。化粧品の成分は多岐にわたるため、まずは簡単に、上記の代表的な試験項目に絞って各国の基準を見てみましょう。


表1 アジア地域4か国における化粧品等の主な有害物質基準値
 日本韓国台湾中国
ホルムアルデヒド配合禁止2000ppm以下75ppm以下ラベルに「ホルムアルデヒドを含む」と表示すること
なお、スプレー製品では使用が禁止されている
メタノール配合禁止2000ppm以下1000ppm以下2000ppm以下
ヒ素10ppm以下
(但し、亜ヒ酸として)
10ppm以下3ppm以下2ppm以下
原料基準(多くは20ppm以下)はあるが、化粧品基準にはない粘度鉱物使用の粉末製品
・・・50ppm以下

その他
・・・20ppm以下
10ppm以下10ppm以下
カドミウム配合禁止5ppm以下5ppm以下5ppm以下
水銀配合禁止1ppm以下1ppm以下1ppm以下
生菌数(細菌・真菌)3歳未満の乳幼児用と目のまわり、口などの粘膜用
・・・100CFU/g以下

その他
・・・1000CFU/g以下
乳幼児製品類と目のまわり
・・・500CFU/g以下

その他
・・・1000CFU/g以下
乳幼児用と目のまわり
・・・100CFU/g以下

その他
・・・1000 CFU/g以下
乳幼児用と目のまわり、口唇用
・・・500CFU/g以下

その他
・・・1000 CFU/g以下

薬事日報社「国際化粧品規制 2021」より



 表1のとおり、国によって安全性基準値に大きな違いがあることが分かります。日本での化粧品成分規制は厚生労働省の「化粧品基準」によって定められており、化粧品原料を規制することで安全性を担保しています。ネガティブリスト(配合禁止成分)とポジティブリスト(制限付き配合可能性分)を設定することで、企業の自由な原料配合を認めている一方、企業責任(製造販売業者)が問われるようになっています(図1参照)。
 一部の製造販売業者においては、「今までは試験を行わなくても問題なく輸入コスメを販売できたので、試験をする必要はない」という方もいますが、厚生労働省の市場調査により化粧品基準違反が発覚した場合、製造販売業者が責任をもって全量回収する事態も起こり得ますので、充分にご注意ください。

 ※参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構・回収情報検索
  https://www.info.pmda.go.jp/rsearch/html/menu_recall_base.html
  (厚生労働省の市場調査とは直接関係ない、自主回収のデータベースです。)


図1 化粧品基準の考え



 なお、禁止物質については、化粧品基準で「配合してはならない」と規定されているのみです。配合していないものの不純物として混合した場合については特に規定がありません。そのため、混合した場合はどこまで許されるのかという定量下限が重要になってきます。

 このようなケースについて、ニッセンケンでは以下のようにご提案していますので参考にしてください。

・ホルムアルデヒド 20ppm(㎎/㎏) ・メタノール 20ppm(㎎/㎏) ・生菌数 10CFU/g又はmL*
・鉛 10ppm(㎎/㎏) ・ヒ素 10ppm(㎎/㎏) ・水銀 1ppm(mg/kg) ・カドミウム 2ppm(mg/kg)
*CFU/g=個数


 ニッセンケンでは、日本で販売する輸入化粧品の安全性に関する試験や法令に関するアドバイスを行っています。また、医薬部外品申請試験、安定性試験や、公定書原料試験(医薬部外品原料規格、食品添加物公定書、日本薬局方など)に加え、ご要望に沿った創作試験にも対応しております。詳細はこちらをご確認ください。皆さまからのご相談、お問い合わせをお待ちしております。

(執筆:ライフ アンド ヘルス事業本部 香粧品グループ 庾 貞熙 (YOO JUNGHEE))


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おさえておきたい基礎知識 《知っておこう!男性肌の特徴、スキンケア方法》

 自分の外見を磨くことは、ある意味で『自己満足』の面もありますが、なんと言っても他の人に自分を良く見せるためのものであります。清潔なイメージは、相手に好感を抱かせることができ、プライベートでもビジネス上でも良い影響を与えます。そんな中、最近はメンズコスメ、メイクアップ男子、ジェンダーレスという言葉をよく耳にします。
 今回は、メンズコスメの最近の傾向や男性肌の特徴、そして効果的な男性のスキンケアについて紹介します。

最近の傾向

 ドラッグストアや雑貨店のメンズコスメコーナーは以前より拡大されており、また、SNSでも男性肌やメンズコスメ情報がよく取り上げられています。実際、株式会社インテージのSCIⓇ(全国消費者パネル調査)の結果を見ると、2020年度はコロナ禍で化粧品市場全体が大きく落ち込んでいる中、男性向け化粧品市場は大幅に拡大しています。

 この背景には、通勤時間や飲み会にかけていた時間・お金をスキンケアにも充てられるようになったこと、オンライン会議中に自分の顔を見る機会が増えて関心を持つようになったことなどの理由が考えられます。


 男性がメイクすることに対する偏見はまだまだあるかもしれませんが、今はユニセックスを超えたジェンダーニュートラル、ジェンダーレスの時代。ファッション業界から始まったジェンダーレスのムーブメントが、化粧品市場にも新たな風を巻き起こしています。これは、中立的な観点から個人の個性と好みに応じて製品を選択してスタイルを作っていくことを意味します。

 男性用化粧品の購入は、10代では3割、20代は約5割程度で30代が約6割、40代~60代では約7割。若い世代ほど、男性用の化粧品より、女性用基礎化粧品を探していることが分かります。
 では、上記の調査結果のように男性も女性用化粧品を使えばいいのでしょうか?

男性肌の特徴

 メンズ化粧品はもちろん、ジェンダーレス化粧品が多くなっている中、男性にとってより良い化粧品を知るためには、まず男性の肌の特徴を把握しなければなりません。


①厚みがある
 20代と40代の肌が違うように、男性と女性の肌にも違いがあります。エストロゲン(女性ホルモン)、テストステロン(男性ホルモン)などホルモンの違いは肌にも影響を及ぼし、男性と女性の肌構造を変えます。

 特に、表皮の厚さは男性が平均して約1.5mm、女性は約1.2mmと男性の方が厚い傾向があります。また、男性肌は女性肌よりもコラーゲン層が厚くなっています。その理由としては、男性ホルモンのテストステロンはコラーゲンの合成を活発化させ、さらにコラーゲンが肌に弾力を与えるとともに、肌全体を厚くするためです。
余談ですが、女性化粧品にコラーゲン成分が多く配合されている理由は、コラーゲン成分を利用して肌に弾力を与え、ハリのある肌にするためです。つまり、男性の厚い肌は女性よりハリと弾力があるため、しわが現れる時期は相対的に男性の方が遅くなります。



②皮脂が多い(油分が多い)
 男性の肌が女性よりテカリやすいのは、男性ホルモンのテストステロンが皮脂腺を発達させるからです。男性の肌は思春期頃から皮脂分泌量が増加します。皮脂は皮膚を保護するために必要な物質ですが、過度に分泌されると開いて目立つ毛穴が増えてしまいます。特に、男性ホルモンが多い10代の場合はニキビができやすくなりますが、反対にホルモンが減り始める30代からは皮脂が不足して肌が乾燥するようになり、開いたままの毛穴がより目立ちやすくなってしまいます。



③しわが目立ちやすい

 肌の保水力に影響する角層量は女性の30~50%に過ぎません。丈夫に見えて、乾燥しやすいのが男性肌の特徴です。
 20代までは皮脂が多くて乾燥を感じにくいのですが、歳を取ってホルモンが減少し肌の弾力が落ちしわができ始めると、男性の肌は女性よりも厚いためしわが深く見えます。また、エストロゲンは皮膚の老化を抑え、表皮細胞の増殖を促し、傷の治りを早める効果がありますが、男性は女性よりエストロゲンの分泌量が少ないため傷の治癒速度が相対的に遅いです。抗酸化力も低いため、紫外線による影響を受けやすいのも特徴です。紫外線に露出された肌は黒くなり、光老化による影響が早く現れます。


 つまり、男性は女性より皮脂の分泌量が多く、肌の弾力を維持するコラーゲンも女性より多いため、医学的には老化の進行が遅いはずですが、多くの場合きちんとスキンケアをしないため、しわや毛穴により老けて見られやすくなるということです。それに加え、男性の皮膚水分含有量は女性の30~50%程度と元々乾燥肌になりやすいにも関わらず、毎日ひげを剃ることで肌の保護の役割をする角質層の表面を削り出し、より肌の水分を失っています。摩擦は肌への大きな負担になり、乾燥や肌荒れにつながります。朝と夜1日2回の洗顔で余分な皮脂を落とし、洗顔後・ひげ剃り後は化粧水などでしっかり保湿することが大事です。

 とりあえず、という考えで女性用化粧品を使うのではなく、男性肌の特徴が考慮された油分が少なく、水分が十分な化粧品を使いましょう。大切なのは「洗顔」「保湿」「紫外線対策」。スキンケアをしっかり行えば、きれいな肌になれます。

男性スキンケアステップ / きれいな肌になるために

 スキンケアの種類も様々です。ここでは使用する順番に沿って、タイプ別に紹介します。基本的には水分量の多いさらさらとしたテクスチャーのものから、油分の多いこってりしたテクスチャーのものへという順番で使用することが多いです。


化粧水、スキン(トナー)

 肌のキメを整える、液体タイプの化粧品です。男性用にはアルコールが多く含まれており、顔の油分が多い脂性肌の方には良いのですが、刺激が強いため、なるべくアルコールが少ない化粧品を選ぶのがおススメです。

美容液、エッセンス(セラム/アンプル)

 しわ改善/美白/ニキビ緩和などの効果のために塗ります。化粧水の代わりに使っても構いません。化粧品の中では高価な商品が多くなっています。テクスチャーとしては、エッセンスは瑞々しい、アンプルはもちもちして高濃縮、セラムはエッセンスとアンプルの真ん中です。

乳液、ローション(エマルジョン)

 トナーより油分があり、不透明な白い液体です。保湿力はややあります。脂性肌ならこの段階で終わらせても構いませんが、乾燥肌の場合、顔がつっぱることがあるため追加でクリームを塗ることをおススメします。

クリーム

 ローションよりもこってりした化粧品で、効果や保湿がより確実です。オールインワンタイプを使用する面倒くさがり屋ならば、洗顔直後の水分が乾く前に叩いて吸収させる形でクリームを塗ると良し。油分や保湿力がどのぐらいの製品が適切なのか、肌のタイプによって確認しましょう。

アイクリーム

 目元の小じわ予防のために塗ります。目もとだけではなく、首のしわやほうれい線など、しわの深い所に塗ってケアする人もいます。目元は他のところに比べて毛穴がとても狭いため、アイクリームは、普通のクリームより油分が多く配合されています。

その他

・ハンド/ボディクリーム ・CCクリーム/BBクリーム(自然な肌トーンの補正) ・クッションパクト(丸い形のケースのスポンジファンデーション。スポンジや手でBBクリームを塗るのが苦手な方は、これでとても自然に、肌のカバーとトーン補正が可能です。)

 化粧品にも様々な種類がありますが、面倒な場合は、化粧水・乳液・美容液機能がまとまっているオールインワン(All in One)化粧品を使用して肌を大事にしましょう。

―――――ニッセンケンでは、日本で販売する化粧品の安全性に関する試験や法令に関するアドバイスを行っています。また、医薬部外品申請試験、安定性試験や、公定書原料試験(医薬部外品原料規格、食品添加物公定書、日本薬局方など)に加え、ご要望に沿ったオリジナル試験にも対応しております。詳細はこちらをご確認ください。皆さまからのご相談、お問合せをお待ちしております。

(執筆:ライフ アンド ヘルス事業本部 香粧品営業課 庾 貞熙 (YOO JUNGHEE))


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 コラム > 「化粧品の基礎知識/第1回:化粧品を販売するためには?」
 コラム > 「おさえておきたい基礎知識 《香りを長続きさせるには? / 香水を安全に使うために》」


(参考)
・株式会社インテージ.“コロナ禍でも伸びた!男性の化粧品購入”.株式会社インテージ.2021-04-22
https://www.intage.co.jp/news_events/news/2021/20210422.html
・松浦佳奈.“男性と女性の肌はどう違う?”.富士フイルムヘルスケアサイト
https://h-jp.fujifilm.com/contents/yomimono/top

ヘアケア用品など化学製品の生分解性試験の受注開始 / 自然環境への負荷低減=無機物化を評価

 一般財団法人ニッセンケン品質評価センター(以下、ニッセンケン)は2022年10月17日より、生分解性評価試験の一つである「OECD 301C」の受注を開始いたします。


 2015年9月の国連サミットにおいて、加盟国の全会一致でSDGsが採択されて以来、日本でもリサイクル素材の使用や環境問題への対策、労働環境の改善など、SDGsを意識したモノづくりが進んでいます。その中で、サステナブルな取組の一つとして「生分解性」というキーワードが注目されています。
 「生分解」とは、バクテリアや菌類などの微生物によって、有機化合物が水や二酸化炭素といった無機物まで分解されることであり、土壌(堆肥)や海水、下水などの環境下で自然に還るため、生分解性材料は近年の環境問題に対して効果を発揮する材料として関心が集まっています。

 ニッセンケンではこのたび、生分解性評価の分野で国際的に合意された試験方法の一つであるOECD 301Cの実施が可能となりました。皆様からのご依頼・ご相談をお待ちしております。


■主な試験対象
下水へ排出することが想定される化学製品
 例:ヘアケア用品(シャンプー、リンス)、ボディケア用品(ボディソープ)、化粧品 など
 ※無機化合物のみで構成される製品は試験対象外となります。


■お問い合わせ先
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
エコテックスⓇ事業所
E-mail:oeko-tex@nissenken.or.jp


詳細な内容をご希望の方はダウンロードフォームへお進みください
> 全文ダウンロード(PDF)【ヘアケア用品など化学製品の生分解性試験の受注開始】

化粧品の基礎知識 / 第3回:元売りのメリット・デメリット

 徐々に気温が下がり、過ごしやすい季節になってきました。店頭に並ぶ化粧品もカーキ、ボルドー、マスタードなどこっくりとした色味が多く見受けられます。

 さて、本コラムでは新たに化粧品業界に参入する方向けに、化粧品を販売する上での基礎知識を3回にわたってご紹介しております。これまで、第1回「化粧品を販売するためには?」、第2回「小売りのメリット・デメリット」とお送りしてまいりました。最終回である今回は、「元売りのメリット・デメリット」についてご説明します。

詳細な内容をご希望の場合はダウンロードフォームへお進みください > 全文ダウンロード(PDF)【化粧品の基礎知識 / 第3回:元売りのメリット・デメリット】

化粧品の基礎知識/第2回:小売りのメリット・デメリット

 7月に入ったばかりですが、すでに梅雨も明け、早くも猛暑日が続いています。暑さはメイクの大敵です。メイク崩れ防止術の一つとして、あえて国産化粧品ではなく暑い国の輸入化粧品を使うという手もあるそうです。

 さて、本コラムでは新たに化粧品業界に参入する方向けに、化粧品を販売する上での基礎知識を3回にわたってご紹介しております。第1回では「化粧品を販売するためには?」というテーマで、医薬品・医薬部外品・化粧品の違いや、化粧品の取扱形態に応じて必要な資格についてお伝えしました。第2回となる今回は、化粧品販売の中でも特に始めやすい「化粧品の小売りのメリット・デメリット」について、輸入とOEMの観点からそれぞれご紹介します。

詳細な内容をご希望の場合はダウンロードフォームへお進みください > 全文ダウンロード(PDF)【化粧品基礎知識 / 第2回:小売りのメリット・デメリット】